グループホーム「希望の家」


はじめに

認知症ケアにおける一つのスタンダードモデルである「パーソンセンタードケア」に通底しているのは当事者意識、例えば「自分がされたいことを人にしなさい」「もし私が認知症になったら、ここでどんなふうに生活したいだろうか?」です(P11)。そのために最も重要なことは共感と想像力であり、マニュアル的でなく創造的に対応することです。このガイドライは、「介護職のための実践パーソンセンタードケア―認知症ケアの参考書」スー・ベンソン氏編纂, 寺田 真理子氏翻訳をまとめたものです。共著のため重複する部分があり、その場合は章を移して要約しなおしています。また、一部の章は割愛しています。このガイドラインがスタッフの皆様の参考になれば幸いです。パーソンセンタードケアの中核をなす考え方を最初に述べます。

私たちは誰でも、独自の個人として受け入れられていると感じる必要があります。ほとんど全ての人が一人ひとりの違いを尊重され、固有の存在として理解され、ありのままで受け入れられ、自分の人生は自分でコントロールし(P168)、自分に最も合った方法で自分を表現することを励ましてもらいたいという基本的な心理的要求を持っています(P194)。

  • (ア) ケアワーカーはクライアントに対して介護サービスを提供する人と受ける人の能動受動関係ではなく、クライアントと一緒に協働の関係で作業をすることが重要です。
  • (イ) クライアントに敬意をもって対応することが重要です。何をする場合でも、クライアントが日々どう生きるかを選択する権利を一貫して心に留めておかなければいけません。私たちは決してクライアントの嗜好に反して働くのではなく、嗜好を尊重して一緒に働く必要があるのです。
  • (ウ) ただ存在させるのだけでなく、豊かな人生を過ごす手助けをするのがケアワーカーの役割の重要なところです。お互いの違いを尊重して、全員に同じ行動、同じタイムスケジュールを強いることのないように睡眠、起床、食事、お風呂といった日課スケジュール優先よりも、クライアント一人ひとりの個性に合った生活スタイルを計画できれば、両者にとって満足度がはるかに高くなるでしょう(P195)。
  • (エ) クライアントにとっては私たちの職場が「家」だということを決して忘れてはいけません。クライアントにとって快適さを増すことは、老化と認知症による身体的、社会的、そして心理的変化に適応するのを手助けすることです。

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クライアントのことをよく知ることから、その人のケアが始まる

全てのケアは、医学的診断を越えた側面を検討するクライアントの個別アセスメントから始めるべきである(P203)。認知症になる前はどんな人だったかをよく知り、クライアントの独自の人生を意識することは、対人理解、適切なコミュニケーションや個別ケアプランに役立つ。

  • (ア) 職業(主婦、会社員、自営業)と職歴(主婦の場合は母・夫・嫁としてどのような人生を送ったかいわゆる行動障害を解釈できる事もあります。
  • (イ) 趣味、好きなこと、嫌いなこと、性格、精神状態
  • (ウ) 回想法を取り入れ、その人のライフストーリーを作る(伝記的取り組みP50)。
    アルバムや自分の人生の記録、また、過去の品物を持ってきてもらい、新たに編集して、その人の人生を再構成してもらう。

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コミュニケーションの基礎

1. コミュニケーション基礎の基礎

  • (ア) 相手の好む間合い(距離)を保つ。
  • (イ) 本人の好む向き合い方を心がける。
    認知が進行すると真正面が良い。
  • (ウ) アイコンタクトを保つ。
  • (エ) 相手の好むタイプのスキンシップ。
    手を握る、肩をさする、腕を回す、ハグするなど
  • (オ) 自分自身の非言語的メッセージを意識する。

あなたの身体と顔は、あなたがどんな気分なのか、どれだけ忙しいのか、どれだけ興味をもっているのか、誰かのことをどう思っているのかについて言葉よりも沢山のことを伝えてくれることをいつも意識する。したがって、意識して笑顔になるようにする(自然に笑顔にならない場合は特に注意する)

2. 聞くときには、耳だけでなく、目や心も使う。

  • (ア) 身振り・声の変化や調子・顔の表情をよく観察する。
  • (イ) 言葉の奥にある感情や意味を汲み取る。

3. 話すときには

  • (ア) 話し始める前にまず相手の名前を呼ぶ。
  • (イ) 身振り(ジェスチャー)をつける。
  • (ウ) 簡単な言葉と短い文章を使って、穏やかに、優しく、はっきりと簡潔に話す。
  • (エ) こちらの呼びかけに対してクライアントの応答がとんちんかんな時は、無視しているのではなく、こちらの言葉の意味が分からない場合が多い(P37)ということを知っておく。
    必要に応じて何度も繰り返す。

重度の人とのコミュニケーション(P44):時には自意識を捨てる必要がある。

  • (ア) 同じ高さの目線でアイコンタクトする。
  • (イ) 嫌がらなければスキンシップ、手や首にマッサージ。
  • (ウ) うちとけた感じで何か話しかける:天気や趣味・嗜好でもよい。
  • (エ) 相手の反応に耳を傾け、笑顔、うなづき、相づちをうつ。表情を観察する(視線をさまよわせたり、時計を見たりせず、相手に集中する)。
  • (オ) 相手の話す内容に反応する。
    • 愉快な話笑顔。
    • 衝撃的な話びっくりする。
    • 打ち明け話秘密を分かち合っている気持ちを見せる。
    • 怒りや嘆き顔をくしゃくしゃにする。
  • (カ) 言葉で相手の気持ちや感情を指摘して、相手の感情を理解していることを伝える。
  • (キ) ペット、歌、音楽など活用できそうなものは何でも試みる。

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日常生活の活動

  1. クライアントが認知症を抱えて生きていく手助けをし、迷惑をかけていると感じさせないようにする。
  2. 一人ひとりのクライアントのために個別のプログラムを計画し、喜びと刺激を与え、過去の生活様式、趣味や興味を反映した活動を提供することをめざす。
  3. 障害でなく、その人の持っている能力に焦点を当てる
  4. 達成することや最終結果ではなく参加することに焦点をあてる
  5. 興味の持てない活動は行動障害を引き起こす可能性があるので強制しないようにする。
  6. クライアントのためにするのではなく、一緒にすると考える。
  7. 家事など日常の普通の活動に関わり、「役に立つことができる」とクライアント全員が感じられる役割意識と目的意識をもってもらう。
  8. 家事関連の活動:料理・掃除・洗濯・ガーデニング・日曜大工などクライアントが選択するもの全て。
  9. 娯楽とスポーツ:もっとも成功する活動は、その喜びと満足感をクライアントと同様に手助けする側も分かち合えるもの
    回想、音楽、芸術、手工芸、テーブルゲーム(花札、トランプなど)、活動的なゲーム、読書など。
  10. 感覚を伴う活動を取り入れよう:マッサージ、ペット、ぬいぐるみ、音楽など感覚的なふれあい。

市域社会との関わり

もっと地域社会と関わろう。

  • (ア) 買い物・図書館への訪問とその他の外の行事や信仰を継続するための支援。
  • (イ) 毎日、毎週、そして季節ごとの活動:一日や週、季節の時間感覚を補助する手助けとなる活動はとても重要。その際には、家族や友達、ボランティアに関わってもらうことも大切。

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食事時間をもっと楽しいものに変えていこう!

1.食事時間は喜びを分かち合うもの。

食事は栄養・味・自立・依存・社会的環境の4つの側面から考える。

  • (ア) 多くのクライアントにとって食事は変化の少ない日課に彩りを添えるなじみ深い習慣であり、いつでも歓迎されるものである。
  • (イ) ケアワーカーはこの機会を活用し、親しみやすい雰囲気の中で飲食をともにすると、コミュニケーションが促され、クライアント独自の方法で良い関係が育つ。
    1. ケアワーカーも一緒に食事をしよう(別途休憩時間が必要)。
    2. 社交的な環境を整えよう。
    3. 味の好みを把握しよう。
  1. 一人ひとりの味の好みや好き嫌いをできるだけ把握する必要がある。
  2. 大胆で彩り豊かで多様な刺激を用いて視覚、聴覚、触覚、嗅覚を刺激する。
  3. 常識に縛られない
    • (ア) 味覚は千差万別:砂糖かけごはんもあり。
    • (イ) 手で食べたがるひとには手で食べやすいように調理や食材を工夫する。
  4. 乏しい食欲はこうやって刺激しよう。
    色と飾り付けにほんの少し気を配れば、乏しい食欲も大いにそそられるもの。
2. 食事の介助時に気をつけること。
  • (ア) 前かがみが食べやすいので、リクライニングを解除する。
  • (イ) 食事用エプロンを準備。
  • (ウ) 何よりも相手に話しかける。
    1. 相手の名前を読んでいま食べているものが何かを伝える。
    2. 口に運ぶたびに声をかけるか、カップやスプーンで軽く唇に触れて注意を促す。
  • (エ) クライアントが気に入ってるかどうか表情や身振りに注意し、気に入らないようであれば別のものに変える。

3. 食間のおやつや飲み物はその人の好むパターンに合わせる。

4. 老年期によい栄養状態を保つために体重に目を光らせておくことが重要。

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もっと動いてもらおう

1. 自由に動けるようにしているか。
実際には知らないうちに拘束がなされてないかどうか検討する。
2. 何が動作に影響を与えたり、制限したりするのかを詳細に観察する。
クライアントが頼まれ事をしないのを認知症のせいにしないでもっと正当な理由を探す。

身体介護をもっと楽しい時間に変えていこう

1. 身体介護では、一人ひとり求めるものが異なる。
入浴の習慣は皆それぞれ異なるので入浴日課は個人が希望する日(週)課に合わせる。

失禁予防と排泄のコントロール

  1. クライアントの誰かが失禁してしまった場合、あなたが公衆の面前で尿失禁や便失禁をした時どうしてほしいかを常に考えて対応する(P93)。落ち着いてやさしく接し、安心させよう。
  2. 排泄チェック表は常に最新情報を反映させる。
  3. クライアントのトイレを常にきれいに保つ。
  4. 下痢の原因に便秘(=宿便:溢流性便失禁)があることを忘れない(P189)。
パーソンセンタードな排泄ケアとは
以下のような行動障害が起きたら、トイレに行きたいのが原因ではないかと一考してみる価値がある。
  1. はっきりとした理由もなくイライラして動揺している。
  2. じっとしないで立ったり座ったりを繰り返したり目的もなく徘徊している。
  3. ボタンやチャックを開けたり、ズボンやスカートを脱ぐことを繰り返している
  4. あちこちのドアを開けて、自分の部屋でないのに入ってしまう。

睡眠障害

1. 一人ひとりにあった、個別のケアをするために

  • (ア) ホームでの日課に合わせるために、今までの生涯続いてきた睡眠習慣を変えることができるだろうか。それは無駄なばかりか、対立を生じさせ、ひいては不安や困難と受け止められるようなBPSDを引き起こすことすらある。クライアントの個性を損なうような日課を負わせることは、どんなことしても避けなければならない。
  • (イ) クライアントの生活史、個性、興味全般について学び、個別のケアとして計画する。
  • (ウ) 不快や睡眠不足の身体的、心理的原因を考える。

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BPSDの理由を知って、クライアントともっとうまく付き合う

BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)は認知症の方に出現しやすい精神行動上の障害」であり、かっては「問題行動」や「周辺症状」と言われていたものである。主な兆候としては、落ち着きのなさや徘徊や帰宅欲求、また家族やケアワーカーに対する挑発的な言動や暴力も含まれる。
観察し、パターンを探して、それから評価・対応する。

1. 徘徊行動を注意深く観察し、徘徊の理由や原因を発見する。

  • (ア) クライアントがどうやって徘徊するのか、またはどうしてその時刻に徘徊するのか、そのクライアントの背景事情や人生史を知っていると役立つ。
  • (イ) 多くの人は目的もなく廊下を行ったり来たりして徘徊しているように見えるが、実際にはトイレや自分の寝室、杖、歩行器、ハンドバッグを探していることが多く、座る場所を探していることもある。
  • (ウ) 「家族(母)など」を理由とする帰宅欲求の原因は、安心感、愛されているという気持ち、守られているという気持ち、つまり認知症の方がそこで感じることができなかったもの全てである(P21)。
  • (エ) 心理的な落ち着きのなさが落ち着きのない行動として表れているのかも知れない。
    1. 自分が何をするべきか、何を考えるべきかが分からなくなっている。
    2. 物事があるべき姿でないことを強く認識していながら、何がおかしいかを正確に指摘できないのかもしれない。

2. 適切な対応

最も建設的な方法はいつも、その人がその人でいられる感覚を強化する手助けをすること。

  • (ア) ケアワーカーとクライアントの間で一対一の親しみ深い友好的な関係を作る。
  • (イ) クライアントが楽しく忙しく時間を過ごせるようにする。
  • (ウ) 相手の嗜好を知って話題や雰囲気や気分を変える。例:お茶、おやつ、散歩、散発
  • (エ) 親しい仲間や友達ができるよう働きかける。
  • (オ) 徘徊行動が以前の仕事や日課と関係があるかもしれない可能性が少しでもあれば、創造的にそれをクライアントの日課に組み込んでみる。
  • (カ) 居場所の必要性
    1. 環境になじむと認知症の人は安心感を覚える。
    2. 居場所の感覚は、自分は誰であるのかという感覚と結びついている。
    3. 自分が自分であると感じるようにできることは全て、その環境にもっと心おだやかにいられる手助けとなる。
  • (キ) クライアントが途方にくれて自制がきかないと感じているように思うなら、クライアントの気持ちが何となくでも分かることを伝えて安心させ、落ち着きと信頼とやる気を取り戻すようにしてみる。
  • (ク) 運動不足か退屈していることもある。
  • (ケ) ユーモアが緊張を和らげてくれることがある。
  • (コ) してはいけないこと:
    1. リアリティーオリエンテーション(「ここはデイサービスですよ、3時にならないと帰れませんよ」)は相手が気分を害するようならやめる。
    2. あなたにとって都合の良い場所にクライアントを連れ戻すという罠にはまらないようにする。

もしクライアントが探しているものをまだ見つけていなければ、5分ごとに同じことを繰り返すはめになる。それはあなたにとってもクライアントにとっても欲求不満と不安を募らせることになる。

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スタッフへの挑戦的な行動にどう対応したらよいか

行動障害の問題は高齢者自身ではなく、その「行動」だということを忘れないでおく。その人のことを「難しい人」とレッテルを張ってしまうのはたやすいことだが、これは往々にしてレッテル貼りに終わり、その人にとってもケアワーカ-にとっても役に立たない。

恐らく最も前向きなのは、いわゆる難しい行動や反社会的な行動は全て、最善の対応方法を私たちが見つけ出すための(成長への)挑戦(課題)なのだと認識すること(ピンチはチャンス)。こうすることでクライアントに不名誉なレッテル貼りをすることが避けられ、私たちの仕事もはっきりする。

行動障害には「その場をしのぐ普遍的な解決策」はない。ある対応方法がAさんにうまくいったからといって、それがBさんにもうまくいくという保証はない。唯一の現実的な対応方法は、一歩さがって、一つ一つの状況をできるだけよく見極めること。それから、異なる対応方法を検討し、試してみること。

1. 正確に何がおきているのかを認識し記述する。

  • (ア) いつどれくらいの時間おきているのか
  • (イ) 行動がなされる直前に何が起きたのか、そしてその直後に何が起きたのかを記録したりじっくり考えたりする。
  • (ウ) どこでおきているのか
  • (エ) 誰にとってどのように問題なのかを定義する。問題を明確に、そして正確に説明することから始める。
以下を区別する
  1. クライアントが以前は自分でやっていたけれども今はできなくなってしまったこと。
  2. 混乱したクライアントがおそらく初めてやり始めること。

2. 可能性のある原因を探す。

  • (ア) その理由が何なのかを発見し理解する。
  • (イ) 知的機能や認識機能の低下。
  • (ウ) 身体的または感覚的・感情的な不快感。
  • (エ) 社会的または感情的な反応。
    • クライアントにはすでに様々な自分自身と社会的環境の喪失体験がありと呼ばれる極端な感情の爆発があり得る。
    • 過去の情報も活用して行動の理由を考える。現在の行動は過去のパターンが強調されたものだったり、特定の個人の確立されたニーズや表現なのかもしれない。

3. どんな行動をとるか決定する

(ア) 具体的に行動し、結果を評価する

問題の予防、容認、行動修正のどれがふさわしいか判断しよう

(イ) 対応する時に気をつけること
予防
  1. 見当識障害や帰属感(安心できる居場所)を手助けるために「標識」をつくる。
  2. 自立的な活動を支援する(ケアワーカーが先回りして問題解決せずに、一緒に問題解決する。
  3. クライアントに対して挑発的な言動をとらない 例×私が誰だかわかりますか。

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(ウ) 容認

周囲に害を及ぼさない言動につては容認する:例性行動通念に反し、高齢者の大半は依然として性的な楽しみをもてるものである。不適切で抑制のない行動は問題となるかもしれないが、個人にプライバシーがあるなら、それは不当に妨害される必要はない。

(エ) 修正

問題行動の中には、薬、特に鎮静剤を使用することで抑えたり管理しやすくできるものがある。しかし、これらの薬には往々にして好ましくない副作用あり、好ましくない。まずは他の方法を試してみること、そしてたとえ服用せざるを得ない状況であっても、薬以外の他の方法を諦めないことが望ましい(P224)。

(オ) 行動の原因分析と対応:特定の出来事や状況(原因)の後に特定の問題行動が起きるのであれば、対応は容易かもしれない。
  • 例:自分の食事が終わった後、隣の人の食事に手を出して食べてしまう原因分析:まだお腹いっぱいじゃないのかもしれないお代わりや、デザートを準備しておいて食べてもらう
  • 他のケアワーカーや家族と相談しながら何でも試してみることが最善の方法である。そうすることで、何が一番うまくいくかを自分の経験から学ぶ。問題とそれに対する対処、そして結果を、メモのようにして記録に残すことも役に立つ。それらの経験やメモを基に定期的にメンバーでカンファレンスして、必要があれば追加の対応策を検討することができる。

4. ためらわずに助けを求めよう

  • (ア) どうしても困ったときには医師や心理専門職の助けを求める。
  • (イ) 自分の感情を意識する(p225)。
  • 問題行動にウンザリしてクライアントへの思いやりを持てなくなったり、自分を責めて艱難に耐えようとするのはケアワーカー自身の心身の健康を損なう危険がある。唯一思慮分別のある対応は、自分の感情を認識すること。自分の感情を誰かとオープンに話しあう勇気をもつ。通常、他のケアワーカーも同様のことを経験していて、共感してくれるだろう。
  • 困難な行動をとる人を介護するには、あなたが自分自身のことを気にかける時間を取る必要がある。

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高齢者の性と性的ニーズを理解して対応しよう

高齢者の性的ニーズ

  • (ア) 高齢者―母や父、祖父母、ケアワーカーにとってはクライアント―が性的な存在として性に関心があると考えるのは居心地の悪いものだが、多くの研究によれば、かなりの数の高齢者が依然として性に関心をもち、性的に活動的であり、このことによって多くの意味で恩恵がある。
  • (イ) 年齢や認知症の有無にかかわらず、人は生あるかぎり性的な存在であり、性的なニーズがあるのだと認識する必要がある。認知症がある人の性的表現は、それが他の人の権利を侵害しない限り、その人の人生を豊かにする基本的な人権である。
  • (ウ) クライアントとその配偶者、あるいはクライアント同士が性的に親密な関係を望むなら、つまりどちらかがそのことを嫌がっているのかどうか確認して、そう望んでいるのなら、そのことに敬意を払いプライバシーを保障する必要性をケアワーカーは理解する必要がある。
  • (エ) 残念ながら現場では、認知症があるクライアントの性的ニーズの表現がその人生の前向きな側面と見られることはほとんどなく、むしろなくなってほしい問題とケアワーカーによってみなされ、不十分な対応がなされることが殆どある。
  • (オ) 多くのケアワーカーは高齢者を性的存在と見なすのが困難なだけでなく、子供のように見なして、高齢者がこの固定観念から外れると驚いたり嫌悪感をいだいたりすることが多い(P233)。
    1. この問題に過剰反応するケアワーカーにはその人自身固有の性的な問題に関するトラウマや嫌悪感を持っているかもしれない。その場合は上司や外部の心理専門職が親身になって十分な配慮に基づいてケアワーカーの気持ちを汲み取る必要がある。
  • (カ) 検討に値する原因
    1. スタッフがクライアントを認識能力の低い子ども扱いして、結果的に性的な挑発行動を冒していないか。
    2. クライアントの自己認識が若い頃に戻っていて、ケアワーカーを配偶者であると信じたり自分と年代的に釣り合う異性と誤認している可能性はないか。
  • (キ) ケアワーカーに対して性的な問題が発生した時の対応
    1. その場で、出来る限りきっぱりと「そういうことはやめてください、○○さん」や「○○さんのことは好きですが、○○さんが××するのは嫌いです」と言葉にして伝える。
    2. 身体介護でクライアントとの距離が近くなったり、接触せざるを得ない時は歌や思い出話(回想)などで気を紛らわしたり、(握って遊ぶボールなど)何かをつかんで遊んでもらう
    3. 自分自身の配偶者や子供の話をして、自分がクライアントではなく別の異性のパートナーであり、親であることをはっきりさせ、クライアントと特別な関係ではないということを認識してもらう。
    4. クライアントに抵抗がない場合は、手や方をマッサージして、クライアントの身体的接触のニーズを満たす。この場合も誤解を避けるため居室ではなく居間でおこなう。
    5. 以上を繰り返しても効果がない場合は、身体介護を同性のケアワーカーに担当してもらう。

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家族や介護者への支援

1. 家族・介護者、友達は一人ひとり異なる

  • (ア) 認知症がある人をGHに入居させたり、デイサービスを利用したりするのは、たいていは自宅で対応できなくなったための次善の、あるいは最終の手段として頼らざるを得なかったからであることをあらかじめ理解しておく。
  • (イ) 家族は「認知症」の隠れた犠牲者であり、罪悪感や心配、また目的や役割の喪失といった経験をし、孤独、悲しみ、抑うつの感情を抱えていることがしばしばである。
  • (ウ) 家族がクライアントを捨てたとか、家族や介護者はもはや重要ではないと考えることはたとえ一瞬でも間違っている。どんな場合でも家族はケアの重要な仲間として、あるいはクライアント同じくらい適切なケアを受ける対象として見なすことが大切である。

2. 家族に対してうまく対応する役割は今家族と話をしているあなた自身にとって大切なことである。

  • (ア) クライアントに対してどのようにして欲しいのか?家族の声に注意深く耳を傾ける。どうすれば良いのかケアワーカーの方が専門家で良く知っているなどと思い込まないようにする。
  • (イ) 家族が心配していることに耳を傾けて必要ならば適切にアドバイスする。家族はその日の勤務者であるあなたに色々と質問してくるかもしれない。その質問や心配事に対してしっかりと耳を傾けよう。
  • (ウ) 提供されるケアについて家族が尋ねる時、あなたの話し方が、ケアの質をどれだけ信頼した得もらえるかに影響することを心に留めておく。答えの中で、一人ひとりのクライアントを特別な存在として大切にしていることを伝える。

3. 苦情の理由を理解して対応し、改善につなげる。

  • (ア) 家族がケアワーカーに向ける苦情や怒りの大半は、抱えている罪悪感に起因しており、よく監視していることをあなたに知らせることで、その罪悪感を克服しようとしていることが多い。
  • (イ) 苦情はケアを改善するチャンスを与えてくれる。

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4. 家族からの苦情は通常以下の3つのうち少なくとも1つを求めている。

  1. 説明と謝罪。
  2. 補償。
  3. 自分がクライアントの事や提供されるサービスについて注意深く観察しているということに気づいてもらう。
  • (ア) 対応法
    1. まずはそのように気分を害して申し訳ないと率直に謝罪することから始める。
    2. 相手の言うことを細心の注意を払って聴く
    3. 答えられるものは答える。その際、必ず真実を告げる必要がある。
    4. わからないと言うことを恐れないようにする。かわりに「今の段階でははっきりしていない(もしくは、わからない)と答える。
    5. 答えられる人をあなたが見つけることを、確約する
    6. 家族がどんなことを心配しているのか、必ず上司に知らせる
  • (イ) 次に、クレームの内容と対処について丁寧に説明する。よい対応では、問題の理由と、それに対してどんな措置をとっているかについて説明する。たいていはこの段階で家族は十分満足するが、念のため苦情の経緯については他のメンバーや上司に知らせておく。
  • (ウ) 24時間の泥沼のような介護から解放された家族は、逆にクライアントに対して愛情や愛着がわいてくるかもしれない。そのような時に家族がクライアントに提供したい物や介護やコミュニケーションについてはそれが明らかにクライアントに対して不利益が生じるのでなければ肯定的に支援しお世話に積極的にかかわることのできる環境を整備する。
  • (エ) 家族会を立ち上げ相互理解に基づいて連帯機能や自助機能を高める。導入ではスタッフの助けが必要。

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質の高いケアとは何かを理解して実践しよう

質とは、一般的にはその設計された意図と顧客(クライアント、家族、第3者機関)のニーズに合ったサービス評価を指し、測定可能な質の表現には下記のようなものがある

温かい第1印象

家族やクライアントになる人にとっては、施設の温かさを感じることがとても大切であり、新しいクライアントやその家族が施設を訪問した時、その第一印象が最も重要である。衣服、髪型の清潔さや笑顔やあいさつの親しみ深さ、また進んで職種を伝えて自己紹介(名前と職種)をすることが大切である。自分がクライアントの担当者でないときは、訪問者を必ず上司に紹介するなどの礼儀も必要である。

ケアの質とはそもそも何か

提供されるケアがクライアント(利用者&家族)のニーズに合ったサービスであるかどうかで質がきまる。高質のケアが提供されるとは、下記の3項目を満たすことであり、そのためには各施設において質への取り組み方針が特定されている必要があり、全員が質に責任を負っているということを自覚する必要がある。苦情は全て、提供するケアを見直し、改善するチャンスとして建設的に扱い、個人と個人、もしくはチームミーティングで問題を検討し、話し合う。

1. クライアントの高い評価:クライアント(および家族)にとって高水準のケア
  • (ア) 自分がクライアントだったらどう感じるかを常に考慮する。
  • (イ) 常に敬意を持ってクライアントに接する
    1. クライアントに対して礼儀正しくする。法人の理念と実践の指針参照
    2. 他人の前で裸になる必要がある場合は必ずバスタオルで覆う。
    3. 異性ケアワーカーのケアを嫌がる場合は同性のケアワーカーが行う。
    4. クライアントが呼んで欲しい名前で呼ぶ。
    5. クライアントの私物を尊重して大切にし、また他者のものといっしょくたにしない。
  • (ウ) クライアントに多様な選択肢があること、そのためにクライアントのことをよく知ること。
    食べ物、日課、衣服、活動、テレビ視聴
  • (エ) 環境の質
    1. 壊れたり損傷を受けた家具や備品の存在をすぐに報告し、修理もしくは交換する。
    2. 整理整頓し、汚れた食器はすぐに洗う。
    3. 床や壁の汚れはすぐに清掃し、必要があれば防臭スプレーをかける。

2. 働く人の高い自己評価:ケアワーカーにとって前向きで働きがいのある職場環境

3. 第3者からの高い評価:クライアント予備軍(入居希望者、市民、同業者)に誇りと自信を持って示すことのできるサービスシステムおよびケアワーカーの働きぶり。

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ケアワーカーのストレスマネジメント

苦悩を抱えていたり、コミュニケーションが困難な人と日常的に接するという認知症ケアの性質上、認知症を抱える人と働くことはストレスになると一般に認められている。また、当事者だけでなく家族も心配や懊悩や精神的ストレスに満ちているので家族の支援も必要であるという負荷もケアワーカーかかってくる。組織での立場上、自分にはあまり権限がなくてストレスになっている状況に対してコントロールできていないと感じる場面もある。

ストレスへの対処法

1. 自分らしい生活をして、身体が不快で不要なストレスにさらされないようにする。
  • (ア) 休みなしで長時間勤務することを避ける。
  • (イ) 定期的に休暇を取る。
  • (ウ) 自分なりのストレス解消法やリラックス法を身につける:例:音楽、散歩、買い物
  • (エ) 誰かに話す。

どんな時に自分が最も傷つきやすくなるのか認識すること、そしてそんな時に他のスタッフに助けを求める必要があるのか認識することは決して恥ずかしいことではないの。時には外部の精神科医やカウンセラーに助けを求めることも必要である。

2. ストレスの原因を特定して、それを除去または減少させる。

  • (ア) 同僚との人間関係がストレス源になっている時は、その同僚と話をすることが大切であり、必要な場合は上司に同席してもらう。
  • (イ) 同僚との信頼関係を育てるためにすべきこと。
    • 攻撃的になったり過度に批判的になったりせずに率直に話す。
    • オープンに同僚を支援する。
    • 情報を共有する。
    • 助言に耳を傾ける。
    • 全員がチームへの貢献を評価されていると感じらえるようにする。
  • (ウ) 同僚との信頼関係を壊すやりかた
    • 陰で批判する。
    • 自信をくじく。
    • 合意を破る。
    • 人を操ろうとする。
    • 一貫性がない。
    • 当事者にまず話す音をせずに同僚を飛び越えて上司に報告する。

3. ストレスによって生じる感情に対応する