認知症ケアにおける一つのスタンダードモデルである「パーソンセンタードケア」に通底しているのは当事者意識、例えば「自分がされたいことを人にしなさい」「もし私が認知症になったら、ここでどんなふうに生活したいだろうか?」です(P11)。そのために最も重要なことは共感と想像力であり、マニュアル的でなく創造的に対応することです。このガイドライは、「介護職のための実践パーソンセンタードケア―認知症ケアの参考書」スー・ベンソン氏編纂, 寺田 真理子氏翻訳をまとめたものです。共著のため重複する部分があり、その場合は章を移して要約しなおしています。また、一部の章は割愛しています。このガイドラインがスタッフの皆様の参考になれば幸いです。パーソンセンタードケアの中核をなす考え方を最初に述べます。
私たちは誰でも、独自の個人として受け入れられていると感じる必要があります。ほとんど全ての人が一人ひとりの違いを尊重され、固有の存在として理解され、ありのままで受け入れられ、自分の人生は自分でコントロールし(P168)、自分に最も合った方法で自分を表現することを励ましてもらいたいという基本的な心理的要求を持っています(P194)。
全てのケアは、医学的診断を越えた側面を検討するクライアントの個別アセスメントから始めるべきである(P203)。認知症になる前はどんな人だったかをよく知り、クライアントの独自の人生を意識することは、対人理解、適切なコミュニケーションや個別ケアプランに役立つ。
あなたの身体と顔は、あなたがどんな気分なのか、どれだけ忙しいのか、どれだけ興味をもっているのか、誰かのことをどう思っているのかについて言葉よりも沢山のことを伝えてくれることをいつも意識する。したがって、意識して笑顔になるようにする(自然に笑顔にならない場合は特に注意する)
もっと地域社会と関わろう。
食事は栄養・味・自立・依存・社会的環境の4つの側面から考える。
3. 食間のおやつや飲み物はその人の好むパターンに合わせる。
4. 老年期によい栄養状態を保つために体重に目を光らせておくことが重要。
BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)は認知症の方に出現しやすい精神行動上の障害」であり、かっては「問題行動」や「周辺症状」と言われていたものである。主な兆候としては、落ち着きのなさや徘徊や帰宅欲求、また家族やケアワーカーに対する挑発的な言動や暴力も含まれる。
観察し、パターンを探して、それから評価・対応する。
最も建設的な方法はいつも、その人がその人でいられる感覚を強化する手助けをすること。
もしクライアントが探しているものをまだ見つけていなければ、5分ごとに同じことを繰り返すはめになる。それはあなたにとってもクライアントにとっても欲求不満と不安を募らせることになる。
行動障害の問題は高齢者自身ではなく、その「行動」だということを忘れないでおく。その人のことを「難しい人」とレッテルを張ってしまうのはたやすいことだが、これは往々にしてレッテル貼りに終わり、その人にとってもケアワーカ-にとっても役に立たない。
恐らく最も前向きなのは、いわゆる難しい行動や反社会的な行動は全て、最善の対応方法を私たちが見つけ出すための(成長への)挑戦(課題)なのだと認識すること(ピンチはチャンス)。こうすることでクライアントに不名誉なレッテル貼りをすることが避けられ、私たちの仕事もはっきりする。
行動障害には「その場をしのぐ普遍的な解決策」はない。ある対応方法がAさんにうまくいったからといって、それがBさんにもうまくいくという保証はない。唯一の現実的な対応方法は、一歩さがって、一つ一つの状況をできるだけよく見極めること。それから、異なる対応方法を検討し、試してみること。
問題の予防、容認、行動修正のどれがふさわしいか判断しよう
周囲に害を及ぼさない言動につては容認する:例性行動→通念に反し、高齢者の大半は依然として性的な楽しみをもてるものである。不適切で抑制のない行動は問題となるかもしれないが、個人にプライバシーがあるなら、それは不当に妨害される必要はない。
問題行動の中には、薬、特に鎮静剤を使用することで抑えたり管理しやすくできるものがある。しかし、これらの薬には往々にして好ましくない副作用あり、好ましくない。まずは他の方法を試してみること、そしてたとえ服用せざるを得ない状況であっても、薬以外の他の方法を諦めないことが望ましい(P224)。
質とは、一般的にはその設計された意図と顧客(クライアント、家族、第3者機関)のニーズに合ったサービス評価を指し、測定可能な質の表現には下記のようなものがある
家族やクライアントになる人にとっては、施設の温かさを感じることがとても大切であり、新しいクライアントやその家族が施設を訪問した時、その第一印象が最も重要である。衣服、髪型の清潔さや笑顔やあいさつの親しみ深さ、また進んで職種を伝えて自己紹介(名前と職種)をすることが大切である。自分がクライアントの担当者でないときは、訪問者を必ず上司に紹介するなどの礼儀も必要である。
提供されるケアがクライアント(利用者&家族)のニーズに合ったサービスであるかどうかで質がきまる。高質のケアが提供されるとは、下記の3項目を満たすことであり、そのためには各施設において質への取り組み方針が特定されている必要があり、全員が質に責任を負っているということを自覚する必要がある。苦情は全て、提供するケアを見直し、改善するチャンスとして建設的に扱い、個人と個人、もしくはチームミーティングで問題を検討し、話し合う。
2. 働く人の高い自己評価:ケアワーカーにとって前向きで働きがいのある職場環境
3. 第3者からの高い評価:クライアント予備軍(入居希望者、市民、同業者)に誇りと自信を持って示すことのできるサービスシステムおよびケアワーカーの働きぶり。
苦悩を抱えていたり、コミュニケーションが困難な人と日常的に接するという認知症ケアの性質上、認知症を抱える人と働くことはストレスになると一般に認められている。また、当事者だけでなく家族も心配や懊悩や精神的ストレスに満ちているので家族の支援も必要であるという負荷もケアワーカーかかってくる。組織での立場上、自分にはあまり権限がなくてストレスになっている状況に対してコントロールできていないと感じる場面もある。
どんな時に自分が最も傷つきやすくなるのか認識すること、そしてそんな時に他のスタッフに助けを求める必要があるのか認識することは決して恥ずかしいことではないの。時には外部の精神科医やカウンセラーに助けを求めることも必要である。
3. ストレスによって生じる感情に対応する