わたぼうし


愛する家族を大切にした人生

更新日時
2011年11月18日(Fri)

そういえば...
今年になって急にがんに罹り、あっという間に生活が一変してしまった、一家の大黒柱だったA様にお会いしたのは、真夏のことでした。最初は多くを語らなかったA様でしたが、ある日、「実は...月末にある息子の結婚式にどうしても出たいのです。」と希望を話されました。家族様が、ご自分の病状を考慮し、結婚式の日取りも数か月、早めてもらったとのことでした。奥様は、主人の今の体力で結婚式に出席できるか、非常に心配しており、「死期を早めることになるのなら、私は諦めてもらおうかなと思うんです。」と胸の内を打ち明けられました。
 A様にとって、今何が大切なのか?A様と家族様は本音で話し合われました。そして、「命が短くなってもいいから結婚式に出席する。」という決断を皆様でされたのです。それからは結婚式にむけて、A様は体調を整えられ、息子様の結婚式当日を迎えられました。わたぼうしもサポーターで同席させていただきました。
 当日、モーニングに着替えられA様は、「○○さん、おかげ様で今日を迎えることができました。本当に、今日は気分がいいです。ありがとう。」と、穏やかにお話し下さいました。そして、結婚式が始まり、A様はスピーチもされたのです。心の底からふり絞りだすように、新郎・新婦、ご出席者に、「自分はもう長くありません。自分に代わりまして、これからのこの二人を見守って、ご指南して頂きたく、切に切にお願い申し上げます。」とお願いされました。そして、ご夫婦で「これでよかったな。」「うん、本当によかったよ。」と語られていました。その語らいをみて、“親が子供達を思う気持ち”とは、海よりも深く、空よりも広いものだと改めて教えていただき、涙が止まりませんでした。
 それから、A様は明るくなり、「もう何も思い残すことはありません。」と今後の旅立ちに向けて、ご自分の意見をよく話して下さいました。結婚式の3週間後に、ご自宅で家族様に見守られ、旅立たれました。その後、奥様にご挨拶に伺った時に、家族様に残したノートを拝見しました。

イメージ画像“人生で一番の成功は、○○と結婚したことだ”と、何て幸せな愛情表現でしょう。
奥様は、これからぐっと淋しくなるのでしょうねと、ぽつりとおっしゃいました。
奥様のお気持ちを考えると、ただただ胸がつまる思いです。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。

地域看護専門看護師 船越政江

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