「これ、いい写真ですね」から始まる診療|スタッフブログ|林山朝日診療所グループ|神戸市須磨区・長田区・西区

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2026年05月29日

「これ、いい写真ですね」から始まる診療

訪問診療で患者さんのお宅に伺うと、
私はつい部屋に飾ってある写真に目がいってしまいます。

特に、旅行の写真が好きです。
北海道のラベンダー畑。
京都の紅葉。
ハワイの海。
家族で行った温泉旅行。
若い頃に登った山の頂上。

「これ、いい写真ですね。どこですか?」
そう聞くと、患者さんの表情がふっと変わる瞬間があります。

さっきまで痛みや息苦しさの話をしていた人が、
急に目を輝かせながら、
「そこはね、昔夫婦で行ってね」
「この時はまだ子どもが小さくて」
「本当に楽しかったんですよ」
と話し始める。

その瞬間、
目の前にいるのは“病気の患者さん”ではなく、
人生を生きてきた一人の人間になります。

医療者は、どうしても病気に目が行きがちです。
血圧、酸素、痛み、検査結果、薬…
もちろんそれらは大切です。
でも、その人の人生は、
病気だけでできているわけではありません。

旅行の思い出があり、
好きだった景色があり、
大切な家族との時間があり、
笑っていた日々があります。

私は、その話を聞く時間が好きです。
「この時は元気だったんですよ」
そう笑う患者さんの表情には、
病室では見えない“その人らしさ”があります。

緩和ケアや在宅医療では、
“その人らしく生きる”という言葉がよく使われます。
でも、その“その人らしさ”は、
案外こういう何気ない会話の中にあるのかもしれません。
部屋に飾られた一枚の写真。
そこには、診療情報には書かれていない人生が写っています。

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