最後のマッサージ|スタッフブログ|林山朝日診療所グループ|神戸市須磨区・長田区・西区

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スタッフブログ

2026年08月19日

最後のマッサージ

訪問診療で関わっていた患者さんの話です。
ご高齢の方でした。
病気が進行し、自宅で過ごす時間が少しずつ増えていました。

息子さんがとても熱心に介護をされていました。
その息子さんには、毎晩欠かさず続けている習慣がありました。

寝る前に、お母さんの足をマッサージすることです。
「むくみが少し楽になるみたいで」
と、照れくさそうに話していたのを覚えています。

特別な医療行為ではありません。
高価な機械があるわけでもない。
ただ、毎晩、静かに足をさすってあげる。
それだけでした。

ある日、息子さんから連絡があり 、急いで自宅へ向かいました。
お話を聞くと、その日もいつも通りだったそうです。

ベッドの横に座り、足をマッサージしていた。
いつもと同じように。
何気ない日常の時間でした。

そしてふと、
「静かだな」
と思ったそうです。

顔を見ると、息をしていませんでした。
そのまま、眠るように旅立たれていました。

息子さんは、
「最後まで家で一緒に過ごせてよかったです」
と話していました。

悲しみはもちろんあったと思います。
でも同時に、どこか穏やかな空気が流れていました。

私はその時、在宅医療には、病院では作れない時間があると改めて感じました。
病院では、 点滴やモニター、処置に囲まれながら最期を迎えることも少なくありません。
もちろん、それが必要な場面もあります。
しかし自宅では、 いつもの部屋で、 いつもの音がして、 いつもの人がそばにいる。

そして、
「特別な最期」
ではなく、
「いつもの延長線上」
として人生が終わっていくことがあります。

毎晩のマッサージも、 息子さんにとっては特別なことではなかったのかもしれません。

でも私は、その時間そのものが、何よりのケアだったように思います。

緩和ケアでは、
「何をしたか」
だけではなく、
「誰と、どう過ごしたか」
がとても大切になります。

人生の最後に、 大切な人に触れてもらいながら、静かに旅立つ。
それは、とても幸せな最期だったのではないかと、私は思います。

林山クリニック 愛新 啓志

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